僕が大学を卒業する直前、周囲で次第に不可解な出来事が起きるようになり、知人も妙なことを言うようになった。それまでずっと皆から排除されいろんな不可解な行為を受けていたけど、僕は「これは何かある」と思った。大学構内に同和団体が大きなポスターをたくさん貼り付けたりして、僕を追い詰めているのがわかった。
それで当時NYにいた叔父に連絡を取った。彼が学生時代に狭山闘争に参加していたのはその時初めて知ったが、何度か連絡を取ると、ある日パタッと不可解な出来事が止んだ。
そして僕は大学を卒業し、実家に戻った。あれは2002年、僕が20代の終盤の頃である。
そしてその年の夏に、某所で短期アルバイトをした。市内の運送会社で仕分けのバイト。電車で二駅乗ってしばらく歩いたところにある営業所だった。
そこでは最初、僕一人だけ働いていた。例によって社員も最初から妙なことを言ってきたが、とりあえず働いた。そしたらすぐ後に、もう一人バイトが入ってきた。ある日の休憩時間に彼に話しかけると、彼は「自分は皇室の乳母係の家系だ」と言った。僕が「皇室の乳母係?それって天皇が小さい時に育ててたんですか」と言うと、彼は「そうだ」と言う。僕が「どちらの一族ですか?」と訊くと、一言「信州」と言った。
彼は僕の目を見なかったし、何か言いたそうだが黙っているような様子だった。
そして数日すると、彼は職場を辞めてしまった。当時「すぐ辞めちゃったな、あの人」くらいにしか思わなかったけど、要するにあの人は、僕に「天皇家に狙われているぞ」と教えるために現れたんだろうと、今は判ってる。
あれから20年以上経った。僕の家は普通のサラリーマン一家である。